ダージリンからバラナシに向かう途中、パトナ駅で乗り継ぎだった。
はじめての乗り継ぎで、しかも電車がwaiting listで心配していたのだけど、乗り継ぎ便が2時間、4時間、5時間と遅れ、結局予定の7時間遅れでやってきた。そんなで、だいぶ駅で時間があった。

早朝についたものだから、ホームでぼーっと座ってると、だんだん日が明けてすごくきれいだったな。

最初は日記を書いたり、チャイ飲んだり、ガイドブック読みながら計画立てたりしてたのだけど、やっぱり時間を持て余す。
パトナは結構治安がよくないと聞いていて、寝ることも避けたくて、たまにリストを探しに歩いたりしつつも、とにかくホームに座って人を観察していた。


そしたら、視界の前の方で、ずっとそこにあった影がうごいて。
何かモノだと思ってたら、人が寝ていたようだった。

インドの駅のホームなんて、電車待ちの人たちがごろごろと寝ているものだから、そこまでは驚かなかったのだけど、どうやらいつもと様子が違う。

ずっと寝ていたからか、身体がうまく動かないよう。
ゆっくりゆっくり上体を起こすと、足を引きずるように移動しようとしていた。

そこでやっと気付いたのだけど、その男性は服を身につけていないようだった。
身体にかけていた布だけで隠しながら、移動しようとしていた。

すごくびっくりして、しばらく目を離せなかった。

物乞いや、手足がなかったり、曲がっていたり、目がなかったり、そうした人たちが乞う姿は幾度となくみていたけれど、このとき目の前にいたその人は、自分で歩くこともできないし、物を乞うこともできないよう(しようともしていない)であったし、仲間もいないし、本当に本当にもう消えてしまいそうだった。

何を感じたのかもはやよくわからなかったけれど、
なぜこんな状態になるまでほっておかれたのだろうとか、
どうして服まで失ったのだろうとか、
そんなことを思った。

あまりに何もないように見えて、纏えるような布とか、それよりも水や食料か、自分が用意出来るものはいくらでもあるはずなのに、結局動けずに、どうしようとずっと様子をうかがっていた。

そしたら、しばらくしてインド人が水とビスケットを与えて、
たぶん「服はどうした」みたいなことを聞いている。
どうやら、服は布と一緒に引きずっていたらしく、うまく曲がらない関節に苦労しながら、その人たちにとりあえず着ろと施されている。筋力がもう本当に残っていないみたいだった。自分では着れなかったんだろうな。

そのうち、何人かインド人が集まって来て、何か相談している。
彼の腕を持ってどこかへ連れて行こうとしたけど、男性の足はもう本当に力が入らず、結局駅から借りたのか車いすに乗せられ、どこかへ連れて行かれた。きっと病院へ運ばれたのかな。



このことが、とても衝撃的だった。たぶん、ショックで泣いてた。
彼は年は若いように見えて、これまでどんな人生を歩んで、どうして裸で駅のホームに寝そべっていたのだろうとか。もしいま人に助けられて、これから、どのように生きていくのだろうとか。こんな状態になって、身寄りがあるとも思えず、いっぱい、どうして?と思った。彼自身が生きたいと思えているのかも、信じられなかった。


汚い町や、騙そうとする人や、そういうのは結局やさしい景色や思い出で上塗りできてきたけど、今回のような場面を見るのははっきりと嫌だと思った。これは、インドの本当に解決されなくてはならないことだと思った。どんなに愛おしい人間がいたって、こんな状況を起こしてしまうのは、絶対あっちゃいけないと思った。


インドのこと、まだ何も知らないのだろうけど、
いままで、自殺率が高いことは知りつつも、インド人は生きる意志がすごく強く見えていた。だから余計、生きる意志があんなにも薄れて見えてしまう人間をみたことがショックだったのかな。


でも、私は何ができただろう。
どうすべきだっただろう。